非常事態のときに・・・

突然の不幸・・・

丸やは、コロナで外出自粛要請の影響もあり、お客様には、ご連絡を控えるようにしておりましたが、非常事態宣言を前に今週からひとり体制で店内で事務作業をしております。

今日にも非常事態宣言が発令されると報じられた日は、朝から車で外回り、午後には戻る予定でした。

お客様には、ご来店を控えていただいていることもあり、用事を全て済ませてから向かおうとしているところにお店から留守番電話の転送。

初めてのお客様から、「喪服の長襦袢を探している」とのお問い合わせでした。

喪服ということは急いでいらっしゃるのでは。。。

と折り返しご連絡させていただくと

「今、家を離れることができないのですが、いらっしゃっていただけますか?」と。

住所を伺ってみると、駅からはちょっと離れているので、車での移動だった私は、急遽、必要だと思われるものを持って伺うことになりました。

初めてお会いしたHさまは、とても上品でお優しそうな方。

ご主人様を突然亡くされ、告別式は喪服で参加したいと、お電話くださったのでした。


こんな状況下、参列したいとおっしゃる方にお断りのご連絡をされ、お通夜もできず、数人での告別式。

普段、着物に手を通すことはないのだけれど、せめて、喪服を着て、ご主人様を見送りたいというお気持ちが強くおありでした。

早速拝見させていただくと、無いと思われていた長襦袢はあり、ホッと。

その後、足りない物を点検させていただくと、喪服はしつけのかかったまま。長襦袢は半襟が付いておらず、腰紐や伊達重ねが暖色系しか揃っていないことがわかりました。

Hさまはおひとりで、葬儀の準備や対応で、とても着物のことまで手がまわらないご様子だったので、こちらで全て準備させていただくことになりました。

普段ならば、半襟付けも仕立やの担当なので、お時間をいただくのですが、急を要することなので、こちらで半襟を付け、しつけを取り、小物を準備させていただき、その日のうちにお届けさせていただきました。

コロナの影響がなければ、たくさんの方に囲まれて旅立たれるはずだったご主人様。
せめて、きちんとした姿でのぞみたいという奥様のお心に触れられ、こんな状況下でも暖かい気持ちになりました。

そして、改めて、今、どんなことがお役に立てるのか、考えるきっかけもいただきました。大変なときだからこそ、丸やでもお役に立てることがあると思います。

どうしたら、お役の立ち方があるのか、丸やガできることを進めていきたいと思います。

 

どうぞ、みなさま、お力を強くお持ちになり、健康第一にご自愛下さい。
 

この記事を書いた人

  • facebook
  • twitter
  • instagram

谷 加奈子

丸や呉服店 代表

東京都出身。 大学卒業後、大手メーカーのSEとして就職。 1995年、東京・大田区西蒲田に店を構える1926年創業の「丸や呉服店」の三代目として 家業に入る。2016年、着物をファッションだけではなく、もっと広い意味で伝えたく、「表に立つ人を輝かせる」という想いを載せて一般社団法人「着物道」を設立。
代々受け継がれてきたノウハウを生かして 「自分に似合う着物がわからない・・・」と いう悩みや「キレイに着るコツ」 など、着物 雑誌「七緒」「きものサロン」を始め、新聞や テレビ・ラジオなど多岐にわたって「着物生活」 の専門家として活躍中。