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アカデミー賞・松たか子さんの着物姿

アカデミー賞の松たか子さんご覧になりましたか?

アカデミー賞をご覧になった方も多かったことと思います。

着物好きな方のブログやフェイスブックの投稿では、松たか子さんの着物姿の話題でもちきりでした。

着物姿でレッドカーペットに登場した松たか子さん。

松たか子さんの着物姿を紐解いてみると・・・

お召しの着物について詳しく解説してみたいと思います。

今回のお着物はご家族がご用意してくださったとか・・・
紐解いていくと、家族の年輪が浮かび上がってきました。


着物は薄い朱を渋くしたさび朱または照柿色の総絞りの訪問着。

総絞りとは、糸を小さくたたんで絹や綿の糸で一粒一粒、職人が手で括ることで凹凸を作り、染めることで独特の風合いが生まれます。

総絞りの場合、振袖で20万粒、訪問着で15万粒といわれており、それを手作業で行うのですから、根気がいる仕事です。

訪問着と付け下げの見極め方は、おおまかにいうと、左の衿から胸にかけて、左脇から後ろにかけて、と模様が繋がっているかいないかになります。
 

松たか子さんのお着物の文様は、松皮菱の中に笠松と波の模様が刺繍されていました。

こちらが松皮菱になります。

訪問着の松皮菱は、横に長いタイプでしたね。

こちらは笠松です。

金の刺繍が美しかったですね。

松は、常緑樹であることから色の変わらぬことのめでたさが喜ばれ、吉祥文様の代表格といわれています。

また、袋帯は、花菱七宝繋ぎという文様でした。

花菱は、松たか子さんのお父様の松本白鸚 (はくおう)さんの高麗屋の紋にあたります。

七宝繋ぎは、四方八方に広がっていく文様で人とのご縁は七宝と同じ価値がある、と縁起の良い柄。

先祖から受け継いできた紋と七宝繋ぎの組み合わせで、たくさんのご縁が繋がっていくことを願ったのではないでしょうか。。。

いつもお話させていただいておりますが、着物の文様には意味があり、それを纏うことで言葉にしなくてもメッセージやご自身を伝えることができます。

今回、松たか子さんがお召しになったお着物には、松と波の刺繍で、未来栄光の願いを込め、たくさんのご縁が生まれ育つ願いが込められていたのではないかと推測します。

世界の人々の視線を集めるアカデミー賞で、日本人としての美しさを感じていただけたことでしょう。

晴れやかな場で着物をお召しくださったことに感謝せずにはいられません。

みなさまの目にはどう映りましたか?

この記事を書いた人

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谷 加奈子

丸や呉服店 代表

東京都出身。 大学卒業後、大手メーカーのSEとして就職。 1995年、東京・大田区西蒲田に店を構える1926年創業の「丸や呉服店」の三代目として 家業に入る。2016年、着物をファッションだけではなく、もっと広い意味で伝えたく、「表に立つ人を輝かせる」という想いを載せて一般社団法人「着物道」を設立。
代々受け継がれてきたノウハウを生かして 「自分に似合う着物がわからない・・・」と いう悩みや「キレイに着るコツ」 など、着物 雑誌「七緒」「きものサロン」を始め、新聞や テレビ・ラジオなど多岐にわたって「着物生活」 の専門家として活躍中。