御召とは Vol.2

失われていく絣御召

前回は、御召には7種類あるとお伝えしました。
今日は、その中で、私が始めて出会った「絣御召」についてお話します!
 
まずは、「絣」について。。。
「絣」とは、前もって染め分けた糸を経糸(たていと)、緯糸(よこいと、ぬきいと)、またはその両方に使用して織り上げ、 文様を表すものをいいます。
 
御召の場合には、縦糸に前もって糸を染め分けします。
 
例えば、こちらの絣柄を作りたいときには、何色の色を使うのかをこのように記しています。
 
 
次にこの絣柄を出すために、糸に色を付けていきます。
下記のように色を染めるところには何もせず、染めないところは、染まらないようにガードをします。
 
 
これは全て手作業で行います!
 
テープを巻いては染め、染めたらほどき、またテープを巻く。。。
この作業を経て、絣柄が出来上がります。
 
矢代仁の御召は糸が細くて丈夫なので、細かな柄を描くことができます。
そのため、糸の染めも工程が多く、緻密になります。
 
こうして、染め上がった糸は、機にかけられ織りの工程に入ります。
このように縦糸だけで、絣柄ができ、緯糸を織り込んでいくことによって御召が出来上がります。
 


 
絣柄だけではありません。
こちらは、丸やが50周年のときにお客様にお配りしたテーブルセンターなのですが、縞でありながら織りだけではできない縞文様のため、絣柄のように、縦糸を染めて織り上げました。
残念ながら、高度な技術を要するため。もうこの縞を作ることができません。


 


 
もうひとつ残念なことに、絣柄をできる職人も今ではただ一人となってしまいました。
そして、後継さんもお弟子さんもいません。。。

この時に伺った職人さんももうお仕事ができない体になってしまいました。。。

 
手作業で行う。。。これは日本人のもっとも得意とすることです。
この伝統が受け継がれていってほしいと思うのですが、感覚は一日でできるものではなく、長年の修行があってできるもの。。。
 
修行という道を選ぶ人が少ないこの時代ですが、日本の素晴らしい伝統を守るためには、どんなことでも対応できる職人こそが求められているように思います。
 
なぜ、着物を始め、日本の伝統工芸にはブランドがなかったのか。。。
それは、目利きの旦那衆がいて、自分の目で良い職人を見つけ、金銭面で助け、育てあげ、お抱えとして作らせていたからです。
 
目利きであれば、それがどこの誰が作ったなどは関係なかったのです。
 
世界の人が憧れる日本人の美的センスは、そんな目を持った人がたくさんいたからこそ育ってきたもの。。。
 
これからも世界が憧れる日本であるように、微力ながらお伝えしていきたいと思います。

 

この記事を書いた人

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谷 加奈子

丸や呉服店 代表

東京都出身。 大学卒業後、大手メーカーのSEとして就職。 1995年、東京・大田区西蒲田に店を構える1926年創業の「丸や呉服店」の三代目として 家業に入る。2016年、着物をファッションだけではなく、もっと広い意味で伝えたく、「表に立つ人を輝かせる」という想いを載せて一般社団法人「着物道」を設立。
代々受け継がれてきたノウハウを生かして 「自分に似合う着物がわからない・・・」と いう悩みや「キレイに着るコツ」 など、着物 雑誌「七緒」「きものサロン」を始め、新聞や テレビ・ラジオなど多岐にわたって「着物生活」 の専門家として活躍中。